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皆さんが便利に使っている「電気」、この電気は発電所で作られ、長い送電線を通して一般の家庭に届くのです。
「火力発電所」では電気を作るために、「化石燃料」である「石炭」や「石油」「天然ガス」を燃やして熱エネルギーに替え、水を蒸気にしてタービンを回し、発電機で電気を作っているのです。
私たちが便利に使っている自動車も「エンジン」の中では「ガソリン」や「軽油」を燃やして動力としています。
「化石燃料」を燃やすことにより、「二酸化炭素」や「窒素酸化物」、「炭化水素」などの「地球温暖化物質」や「公害物質」を排出するのです。
地球の人口増加により、ますますこの傾向は高まり、このままで行くと近い将来は、私たちの生活を脅かすどころか、生存すらも危ぶまれる事態になりかねない事態になると予想されます。
そうなったら大変なことですね。そうならないためには燃やしても「二酸化炭素」や「公害物質」が出ないような燃料を選んで使えばいいのです。
燃やしても「二酸化炭素」や「公害物質」が出ない、または少ない燃料として今注目されているのが「天然ガス」や「水素」です。みなさんの家庭に来ているガスは「天然ガス」が使用されています。しかしこのクリーンな「天然ガス」も「化石燃料」で、近い将来にはなくなってしまうのです。
現在では電気を作るのに「石油」や「石炭」の使用減らし、「天然ガス」や「自然エネルギー」である風や光、熱、水を上手に利用した「風力発電」や「太陽光発電」「水力発電」「太陽熱発電」などが注目されているのです。
これからは、いろいろなエネルギーの良いところを生かした使い方で発電する方法が増えてくるでしょう。これを「ベストミックス」と呼んでいます。
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1.環境問題と燃料電池 |
「地球温暖化」や「化石燃料」枯渇など、今やエネルギー問題は地球規模で深刻な問題であり、「化石燃料」に替わる「新エネルギー」の模索という大きな問題に直面しています。
全世界がこの「代替エネルギー」に取り組み、一刻も早く地球環境を守ることが急がれているのです。
わが国においても「新エネルギー政策」を推進し、新エネルギーの開発を官民一体となって推し進めています。
その中でも「燃料電池」は、これからの「電源」として注目されているのです。
「燃料電池」は英語でFuel Cell(フューエル・セル)と言います。まさに「燃料電池」となります。この「燃料電池」は、今、なぜ注目されているのでしょうか。
それでは、この「燃料電池」について少し調べてみましょう。
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なぜ今、「燃料電池」が注目されているのですか。 |
「新エネルギー」の中でも、今「水素」が注目されています。そして「水素」を燃料として発電する「燃料電池」は、「地球温暖化対策」、「分散型エネルギー」を併せ持つものとして期待されているのです。
今日、「燃料電池」は「自動車用燃料電池」を始めとして、「家庭用燃料電池」の開発が急ピッチで進められています。
「燃料電池」で用いられる「水素」は、「太陽光発電」や「風力発電」などの「自然エネルギー」で電気を作り、豊富な「水」から電気分解などで作ることができますし、他のエネルギー資源から改質・転換して製造することもできるのです。
「燃料電池」は燃料を燃やすのではなく、直接化学反応させて「電気エネルギー」を取り出すことができるのです。燃やしてエネルギーを取り出すのではないので、「汚染物質」はほとんど出ないのです。
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「燃料電池」の歴史を教えてください。 |
「燃料電池」が発明されたのは、今から約160年前の1839年、イギリスのグローブ卿が行った電池の実験が始まりとされています。この電池の実験には、理科の実験でおなじみの「水の電気分解」の逆で、電気を発生させるものだったのです。
しかし、この当時ではわずかな電気しか発生しなかったのと、実用化する動きもなく、この原理は長い間眠っていたのですが、宇宙開発に伴って「燃料電池」は日の目を見るようになったのです。
宇宙船の中では燃料を燃やすわけにはいきません、そこでジェミニ宇宙船やアポロ宇宙船などの宇宙船の電源に使われ始めたのです。
「燃料電池」が排出する「水」を宇宙飛行士の飲み水として使用することもできる大変便利な電池なのです。
そして、現在は自動車や家庭の電源として開発が進められているのです。
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燃料電池の歴史 |
1839年 |
Grove 卿(英)により世界初の燃料電池の発電実験成功。 |
1965年 |
ジェミニ計画(米)にて、ジェミニ5号に固体高分子型燃料電池を搭載。 |
1969年 |
アポロ計画(米)にて、アポロ11号にアルカリ水溶液型燃料電池
を搭載。 ⇒今日のスペースシャトルに至る。 |
1980年代 |
ムーンライト計画(日)により、りん酸型、溶融炭酸塩型燃料電池の
開発スタート。 |
1983年 |
バラード社(加)が新しい高分子膜を用いた固体高分子型燃料電池の
開発に成功。 |
1989年 |
バラード社とドイツのダイムラー社が車載用燃料電池として共同開発
をスタート。 |
1997年 |
ダイムラー社/フォード社がバラード社に資本参入。
〈世界各国自動車メーカーの燃料電池車開発に拍車がかかる〉 |
2002年 |
トヨタ自動車、本田技研が世界初の燃料電池自動車を販売(リース)。 |
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「燃料電池」には種類があるのですか。 |
「燃料電池」には、電解質などの種類により、
1. リン酸形燃料電池
2. 溶融炭酸塩形燃料電池
3. 固体酸化物形燃料電池
4. 固体高分子形燃料電池
の4種類があります。
「溶融炭酸塩形」、「固体酸化物形」は高温・高効率であるために、電気事業用として用途があります。また、「リン酸形」、「固体高分子形」は低温・小型であるために、分散型電源としての用途があります。
その中でも、「固体高分子形燃料電池」は、特に小型化できるため、家庭用の電源や自動車用などに用途があるのです。
最近では、この「固体高分子形燃料電池」は携帯電話やノートパソコンなどの電源としても用途が広がろうとしています。
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種類 |
電解質 |
発電出力 |
動作温度 |
用 途 |
固体高分子型
(PEFC) |
固体高分子膜 |
〜100KW |
常温〜80℃ |
携帯用、
自動車用、
家庭用等 |
リン酸電解質型
(PAFC) |
リン酸 |
〜1,000KW |
160〜210℃ |
業務用、
工業用等 |
溶融炭酸塩型
(MCFC) |
溶融炭酸塩 |
1〜10万KW |
600〜700℃ |
工業用
分散電源用等 |
固体酸化物型
(SOFC) |
安定化ジルコニア |
1〜10万KW |
900〜1000℃ |
工業用
分散電源用等 |
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「燃料電池」関連用語 |
燃料電池:米国で開発されたデバイスで Dry Cell(乾電池) に対してFuel Cell
と言われ
その直訳で燃料(Fuel)、電池(Cell)と命名された。
実際には電池ではなく発電装置である。
名称 |
正式名称 |
説明 |
PEFC |
Polymer Electrolyte Fuel Cell |
固体高分子膜型燃料電池 |
PEM |
Proton Exchange Membrane |
イオン交換膜
(プロトンのみ透過する膜)
固体高分子膜、電解質膜
とも言われる |
MEA |
Membrane Electrode Assembly |
電解質膜と電極(含む触媒)
が一体化した膜
・電極接合体(燃料電池の心臓部) |
セル |
Cell |
発電できる最小ユニット |
スタック |
Stock |
セルを複数重ねて一体化したもの |
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「燃料電池自動車」が走る時代がもうすぐに来るそうですが。 |
「燃料電池自動車」は、「固体高分子形燃料電池」から直接電気を取り出し、モーターを回して走行する自動車のことです。排出するものは「水」だけですから、非常にクリーンな自動車なんです。
また、走りながら発電するために、「電気自動車」のようにバッテリーに充電することもありません。
また、「燃料電池」は電気を発電するのに回転部分がないために、すり減ったりしませんし、音も静かなんです。
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家庭用に「燃料電池」が使われるのですか。 |
家庭用には「燃料電池」の中でも、小型で取り扱いやすい「固体高分子形燃料電池」が適しています。
また、「燃料電池」は発電するときに水や熱も発生しますので、この熱でお湯を作ることができるのです。
家庭では「電気」と「お湯」ができるので便利ですね、このシステムを「コージェネレーションシステム」と呼んでいます。
燃料として使う「水素」は、「都市ガス」や「メタノール」、「プロパンガス」、「灯油」、「ガソリン」など、いろいろな燃料から改質して作ることができます。
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燃料電池の仕組みを教えてください。 |
「燃料電池」は、「水の電気分解」の逆を利用して、「水素」と「酸素」を反応させて電気エネルギーを直接取り出すものです。燃やして電気を発生するものではないので、出てくるのは「水」だけなのです。
「燃料電池」は、電極、触媒の板と高分子膜を重ね合わせてセルを構成します。
一組のセルからは約0.7Vの電圧が発生します。
高い電圧を得るためには、重ね合わせて使います。
セルを数枚重ね合わせた物をスタックと呼んでいます。
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図は、燃料電池の構造を示したものです。
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個体高分子型燃料電池
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資料提供大同メタル工業株式会社 |